snowfallのメモ帳

趣味に関することなどを適当に綴る備忘録兼用のメモ帳

EOS R5 review - color test vs EOS R6

5であることがすべて? - EOS R6比での色再現性について検証する

  1. 優秀だがチャートでは一歩及ばないJPEG
  2. Adobe Camera RawではMに特徴的な動きが
  3. もはや完璧といえるDigital Photo Professional
  4. 今回もColorChecker Passportは散々な結果
  5. 優秀だがMに課題の残ったAdobeプロファイルベース
  6. いつも通り極めて優秀なPicture Style Editor
  7. 劇的に改善したモアレ・偽色問題
  8. ベイヤーセンサーにつきまとうモアレ・偽色問題
  9. 結論

2020年7月、ようやくまともなミラーレスとして発表されたEOS R5。共に発表されたEOS R6と比較してどうなのか。本稿では主に色再現性について検証します。

 

f:id:snowfall_2015:20210105221420j:plain

検証に用いるのはいつもの被写体。セッティングに関しても前回とほぼ同等。

光源は前々回から用いているSh50Pro-S。WBはマクベスのWBカードでのプリセット。露出は背景の銀一グレーカード(旧)で取っています。

 Sh50Pro-S & LDA9N-D-G spectrum test

レンズはRF24-105mm F4L IS USMで焦点距離50mm、絞りはF8.0。ボディのレンズ補正はこれまで同様極力デフォルト設定に準じるものとし、周辺光量とDLO(デジタルレンズオプティマイザ)は標準、歪曲補正はoff。

この2機種は電子シャッターを用いるとDレンジが低下することが判明しているため、今回はデフォルトの電子先幕を用いています。

参考:Photographic Dynamic Range versus ISO Setting

色空間はAdobeRGB。sRGB設定で撮影、現像した場合とは数値も見た目も大きく異なります。ただしこのページに貼り付けてあるものはブラウザでの表示を考慮しsRGBに変換してあります。一部外部にリンクしてあるものにはAdobeRGBのファイルもあるので表示環境にはご注意下さい。

 *関連記事

  EOS R6 review - color test vs EOS R
  EOS R color test - after ACR 11.2
  EOS R color test vs α7III
  α7III color test vs α7II
  α7II color test vs D750 & EOS M2 & K-5IIs
  D750 color test 2 (retest)
  EOS M2 color test vs D750 & K-5IIs
  D750 color test vs K-5IIs

 

1. 優秀だがチャートでは一歩及ばないJPEG

ではまず撮って出しJPEGの各PS(ピクチャースタイル)の値から見ていきます。

 

f:id:snowfall_2015:20210105221440p:plain

前回同様両機種ともに優秀。機種間の差異も小さく、EOSシステムの一貫性が保たれていることが数値からも伺えます。

ただ、R6では完璧なFF(Faithful:忠実設定)のRが再びプラスに転じてしまっている点など、厳密に比較するとR6の方が若干素直で優秀なのかな?といった印象も。

なおR6の測定値はほとんどが前回と1度以内に収まっているものの、PT(Portrait:ポートレート)のみMの値が4度と大きく異なりました。原因は不明ですが、このPSについてはあくまで参考程度に留めてください。

Gに関してはいつものCanon。AdobeRGB設定だとプラス側に大きく回るのは最早お約束。そしてCがマイナスに傾くのはR6と同傾向なようです。

 

f:id:snowfall_2015:20210112222437p:plain

4PSの理想値との差異をグラフ化したもの。

やはりNL(Neutral:ニュートラル)やFFでの安定感はR6が若干勝るかなといった印象。特にRが気になります。

とは言え、これはあくまで優劣をつければの話。どちらも優秀であることは間違いありません。

 

f:id:snowfall_2015:20210112225426j:plain

チャート比較。sRGB変換前のAdobeRGBファイルはこちら

PTのCのような差異の大きなところはわかりやすい。しかしその他は極めて似通った部分が多く、その差異も若干輝度が違うからだと言われてしまえば納得できてしまうレベル。R6の検証時も述べましたが、異なる機種でこれだけの統一感が保たれていることは見事という他ありません。

 

f:id:snowfall_2015:20210112231854j:plain

f:id:snowfall_2015:20210112231909j:plain

全体像。

R6/Rの時は背景グレーで区別ができたものの、これだともうわからないレベルですね。正直このサイズだと、テストされたら私も見分けられる自信がありません。

素晴らしい一貫性は道具としての信頼性でもあり、強みでもあります。機材遊びには向かないかもしれませんが、道具は極力プレーンであって欲しい人には最適。特に自身の哲学に基づき色を作っていく人にとって、機種を替えても下地が変わらず安定していることは極めて重要。そういった需要に応え続けるEOSが根強い支持を得ているのも納得がいきます。

 

2. Adobe Camera RawではMに特徴的な動きが

次にACR(Adobe Camera Raw 13.1)の値を見ていきます。

デフォルトプロファイルであるAdobe Color(Acol)とAdobe Neutral(ANL)、そして参考として旧デフォルトプロファイルであるAdobe Standard(ASD)を取得します。

なお、210121現在EOS R5/R6のCanon用プロファイルは実装されていません。おそらく今後実装される可能性も低いものと推察します。

//210102

ACR14でR5/R6用プロファイル(カメラマッチング)が実装されました。

//

 

f:id:snowfall_2015:20210105222746p:plain

概ね似通った動きを見せつつも、Mだけ大きく異る結果となりました。

 

f:id:snowfall_2015:20210105222759p:plain

R5はAcol、ASD、ANL全てでMがマイナスに大きく傾き、R6や前回のRとも異なる状況に。これは興味深い結果です。補正を行う際も影響が残りそうな印象を受けます。

 

f:id:snowfall_2015:20210113102615j:plain

チャート比較。sRGB変換前のAdobeRGBファイルはこちら

こうして見ると色相より輝度差による差異を先に感じてしまいますが、やはりR5はMの色相がマイナスに傾いている影響が見て取れます。

ただ、異なる機種かつサードパーティ製品での現像結果であることを考慮すれば、この程度の差異に収まっていることは十分優秀と評価できるでしょう。

 

f:id:snowfall_2015:20210113093512j:plain

全体像。

このサイズだと輝度差以外ではほとんど区別がつきません。

 

3. もはや完璧といえるDigital Photo Professional

次にDPP(Digital Photo Professional)と撮って出しJPEGの差異を確認します。

 

f:id:snowfall_2015:20210115164302p:plain

全て1度以下と前回のR6の結果を更に上回る結果。もはや完璧です。

 

f:id:snowfall_2015:20210115164411j:plain

チャート比較。

区別は付く、いや付かない?正直もうわかりません。

見分けがつかないため、本項で全体像は掲載しません。

 

4. 今回もColorChecker Passportは散々な結果

次はColorChecker Passport(CCP)を用いてACR用のプロファイルを作成します。
 *参考:ColorChecker Passport - Camera & Image Calibration: X-Rite Photo & Video

 

f:id:snowfall_2015:20210105223547p:plain

どちらも酷い結果で明らかに過補正。使う価値があるとは到底思えません。

 

f:id:snowfall_2015:20210115164429j:plain

チャート比較。

いつものCCPカラー系ではあるものの、これが使える状況はごく限られたものだけでしょう。

前回に引き続き散々な結果となりました。CCPの結果にムラがあるのは以前からではあるものの、ここまで酷いと今後検証する価値があるのか疑問を感じてしまいます。

偏りすぎて参考にならないため、本項も全体像は掲載しません。

 

5. 優秀だがMに課題の残ったAdobeプロファイルベース

次にACRでAcolとANLをベースにした2種類のカスタムプロファイルを作成します。

 

f:id:snowfall_2015:20210105223648p:plain

例によってBとCがシーソーになるパターンなため、今回もBを基準に調整。また、懸念点だったMは予想通り補正が難しく、残り1のためにかなりの補正を要することに。そのため無理せず1残した状態で仕上げました。

 

f:id:snowfall_2015:20210113102940j:plain

チャート比較。sRGB変換前のAdobeRGBファイルはこちら

Cのズレ自体は存在するものの、目視での印象自体は悪くない仕上がりとなっています。Bの修正と共にpB(Gの上にあるpurplish blue)も自然な感じに仕上げ、朱側に傾いていたRも赤らしい赤に。そして視覚的にも違和感のあったMも自然な感じに整い、全体を通じて実物に近い仕上がりとなりました。

なお、今回もAcol版とANL版の差異はコントラスト程度で、それ以外は基本的に同じ方向性で調整を行っています。

 

f:id:snowfall_2015:20210115165330j:plain

全体像。

Acol版の色相以外は微調整に留めているため、チャート上で変化の大きな部分はわかる。でもそれ以外はそこまでの差異を感じない程度。

ANL版はコントラスト自体が大きく異なるためその差は明らか。ただ、それ以外の調整はAcol版同様それほど大きくは行っていません。

いつもどおりパキッと硬めのAcol版と、浅めでそこから弄りやすいANL版といった感じの仕上げ。私はスタート地点をどこにしたいかで使い分けるようにしています。

 

6. いつも通り極めて優秀なPicture Style Editor

最後にPicture Style Editor(PSE)を使用しFFベースのカスタムピクチャースタイルを作成します。

*参考
 :キヤノン:一眼レフカメラ/ミラーレスカメラ EOS|Picture Style Editor
 :EOS M2 color test vs D750 & K-5IIs

 

f:id:snowfall_2015:20210105223704p:plain

これは例によって六軸色調整(Six Color-Axes)、特定色調整(Specific Colors)共にサクッと理想値を実現。これをPCで行えるEOSは本当に楽ですね。

 

f:id:snowfall_2015:20210115172258j:plain

チャート比較。sRGB変換前のAdobeRGBファイルはこちら

元々優秀ではありましたが、いつものGやBの補正を行い、pBも違和感のない色味に。この世代共通の癖かもしれない?マイナスに傾くCも補正。なんとなく「緑」っぽかったのが抜け、「シアン」らしい色味になりました。満点の仕上がりです。

 

f:id:snowfall_2015:20210115173332j:plain

全体像。

さすがに引きでだとわかりません。

何度も繰り返しになりますが、元から優秀なPSを提供している上に、そこから更に追い込みをかけることができるツールが提供されている。これはCanonのEOSシリーズだけが持っている絶対的な優位性です。

他社はRAW現像ソフトに丸投げしている微調整をボディに登録し、撮って出しJPEGに反映させることができる。しかもその作業は最終調整以外PC内で完結でき、カメラの設定を変えながら試写を繰り返す必要もない。これがどれだけ価値があるかということは、多少なりともRAW現像の経験があればご理解いただけることでしょう。

 

PSEは存在感が薄すぎるのか、レビューサイトで取り上げられていることを見た記憶がほとんどありません。公式ページの説明も非常に簡潔なもので、詳細はマニュアルをお読みくださいと丸投げ状態。あまり需要は無いと認識されているのかもしれません。

しかし前述の通り、Canon機で「色」を追求するなら絶対に切り離せないツールであることは間違いありません。デフォルトPSのあとちょっと、もしくはRAW現像でなければ出せないと感じている「色」があるなら、試す価値は間違いなくあります。

素材をよりプレーンな状態に仕上げるのも、そこから自分独自の世界観を作っていくのも自由。メーカーが提供している「出来合い」に慣れたら、次のステップに踏み出してみましょう。

 

7. 劇的に改善したモアレ・偽色問題

デフォルトでも優秀な上、PSEによる自在な調整で他社を寄せ付けない自由度。そしてRAWから現像した場合も優秀。全方位に隙なしとEOSの強みを見せてくれたR5。

しかしEOS同士であればR6の方が若干素直となると、果たしてR5に乗り換えるだけの価値はないのか。

あります。

それはR6の泣き所、低画素故の弱点がR5では克服されているからです。

 

f:id:snowfall_2015:20201217103407j:plain

いつもの被写体のこの部分。赤枠で囲ったところを見てみます。

 

f:id:snowfall_2015:20201217103426j:plain

まずは同被写体をスキャナー(CanoScan 8800F:2400dpi)で取り込み縮小したもの。これはR6の検証時に用いたものと同じデータ。

実物を目視した場合のイメージはこれをもう少しスムーズにした感じで、筆塗りの濃淡などがしっかりと見て取れます。

なお、今回はあくまでモアレの検証用データであるため、色についてはひとまず棚上げします。このスキャンデータの色再現性がベストというわけではありません。

 

f:id:snowfall_2015:20201217103442j:plain

こちらはスキャンしたデータの等倍表示。CMYKの網点がまるで円のように連なり、画像を構成していることがわかります。

 

それでは実際にカメラで撮影したデータで比較してみましょう。左がJPEG、右がACR(デフォルト設定)。左右を比較することでボディ内現像との差異を確認することが可能です。

前回取得したEOS R(3030万画素)も加えてありますが、被写体との距離が若干異なる(前回のほうが近い)ため、あくまで参考にとどめてください。

  

f:id:snowfall_2015:20210115190927j:plain

R6ではJPEG、ACR共にモアレが盛大に発生。格子状に走るカラーノイズで上書きされ、元絵の繊細な描写がマスキングされてしまっています。当然ここまで酷いものは相当縮小しても残ってしまうため、極めて厄介な存在です。

続くRでは若干のモアレを感じさせはするものの、あくまで厳しくチェックすればというレベル。等倍でこれですから縮小後はすぐに認識できないレベルに収まります。実用上問題はないと評価できるでしょう。

ただ、厳しく言えば若干発生しているモアレにより、本来の色の純度が失われていることは事実です。

そして最後のR5。これはもう驚きのレベルで、JPEGですら網点の丸構成が認識できてしまう描写。というか、「SQUARE」の上にあるシミのような汚れ(これは元絵から存在する)まで描写できており、色評価以前に解像度の高さに目が奪われてしまいます。

当然モアレもR以上に抑え込まれている、というよりもはや皆無と評しても問題ない状況。Rでは僅かに感じたカラーノイズによる色の濁りがほぼ消滅しています。特にACR側のクリーンさは完璧なレベルで、雑味が皆無となりました。

 

f:id:snowfall_2015:20210123131544j:plain

当然これは被写体が自然物の場合もです。この子の鼻筋にご注目。

 

f:id:snowfall_2015:20210123131758j:plain

等倍および200%表示。

細かい毛が1本1本描写され、ごく僅かに発生している偽色も毛の陰影レベルに収まっているため不自然さは皆無。R6ではまるで偽色の毛が生えているかのようでしたが、R5ではそのようなノイジーさは全く見受けられません。

RからR6に切り替えたことで失ったクリアさを取り戻した、いやそれ以上の純度を手に入れたと感じます。うちの子がとてもとてもきれいで可愛く撮れるようになりました(大満足)。

 

8. ベイヤーセンサーにつきまとうモアレ・偽色問題

ただし、R5でモアレや偽色が発生しないわけではありません。

 

f:id:snowfall_2015:20210115230425j:plain

これは別日に撮影したデータ。距離をいつもの検証時より取ることで、擬似的に被写体の描写がより高精細になったのと同じ状況を作り出しました。

レンズがボトルネックとならないよう、この撮影だけはレンズを変更。手持ちで最も解像度の高いSIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Artを使用しています。

 

f:id:snowfall_2015:20210115230438j:plain

御覧の通り、ばっちりモアレが発生。

結局RGGB配列ベイヤーセンサー採用機である以上、モアレや偽色から逃れることはできないということです。

これから逃れるためにはFoveonのような積層型センサーを用いるか、ピクセルシフトのようなギミックで弱点を補うか、従来通りひたすら高画素化する力技で行くしかありません。

とは言え高画素化にも物理的に限界がありますから、その先は各社どのような方向に進んでいくのかは興味深いところです。

 

f:id:snowfall_2015:20210115230450j:plain

ちなみに今回のモアレ、ACRだとすっきり消えます。

前回の検証でも述べましたが、これもCanonのデモザイクアルゴリズムの質が低いことの証左と言えるかもしれません。

ノイズ処理などの質が改善していることは感じ取れますので、今後はデモザイクに関してもより高品位な処理となるよう改善を期待したいところです。

 

9. 結論

Canon独擅場であるPSEなどの強み。そしてチャートではEOS R6に一歩及ばぬも、高解像度化によるモアレや偽色の抑制で得られる実写でのクリアな画質(色再現性)。操作系やAF周りもR6同様一新され、一気に使える道具としてジャンプアップ。

これだけ遅れておきながらピクセルシフトは未実装だったりと完璧ではないが、「5」であることは伊達ではない。そう実感させてくれるだけ力は確かにある。そこに実売価格でR6の5割増し(2021年1月現在)分の価値が見出せるなら「あり」だろう。

 

f:id:snowfall_2015:20210123155907j:plain

初代EOS 5Dから15年。周回遅れを取り戻すことはできるのか。

 

先に検証を行ったR6も従来のCanonの強みを継承した上に、実用的な操作系に最新のAFを兼ね揃えた素晴らしいカメラでした。

しかし、このR5はその上をいくカメラ。最新センサーがもたらす高解像で高精細な描写は実写での色再現性にも作用し、今までにないクリアで滑らかな色味を実現。R6ではモアレや偽色で損なわれてしまうことのあった色味を、R6はもちろん初代Rも超えるレベルでリアルに描写できるようになりました。間違いなく現時点におけるCanon最高の性能を有する機種でしょう。

 

f:id:snowfall_2015:20210123183313j:plain

ISO6400, NR:Low(撮って出しJPEGをリサイズのみ)

 

そしてこの色再現性は低感度だけでなく、Rを超える高感度でも発揮されます。このISO6400はRであれば厳しい領域で、個人的には常用外でした。でもR5ではこの通り。普通に実用レベルです。

RAWで確認する限り、確実にノイズは増えています。しかしボディ内現像のNR処理品質が上がったことにより、いわゆる「Canon塗り絵」化することもなくディテールを維持。カラーノイズも抑制され、色の描写も崩れていません。この感度で等倍鑑賞すら可能なレベルを維持できていることは驚きでした。

さらにR5はその画素数から、縮小によるNR効果が大きいのもポイント。等倍では厳しい領域でも、実用上は問題のないレベルに抑え込めるケースも少なくありません。

 

f:id:snowfall_2015:20210123191419j:plain

瓜二つな2機種。操作系もそのまま引き継げ乗り換えても違和感がない。

 

前回の検証に引き続き、R6の色再現性も素晴らしいものがあります。

しかしながら、今となっては低画素なセンサーは単純な解像度だけでなく、色再現にも影響を与えることがあるのは前述の通り。ベタ塗りチャートの再現度は高くとも、実際の被写体相手だと偽色によるカラーノイズが発生しがちな状況は、使いづらさを感じてしまうものでした。

EOS-1D X Mark IIIのようにGDローパスフィルターを実装していればまた違っていたのかもしれませんが、個人的に今の時代に2000万画素は少ないのではないかというのが率直な印象です。

高感度性能面も確かに等倍では明らかな強さを見せるものの、縮小する余地が少ないため伸びしろがほとんどなく、意外と早い段階で実用限界が訪れることも。

 

f:id:snowfall_2015:20210123162633j:plain

R6の上位機種に相応しい高性能。その代償は5割増しの価格。

 

もちろん絶対的な高感度性能は明らかにR6に分があり、分単位の長時間露光などを行うとR5は高画素機の弱点が露呈。R6はもちろんRにも惨敗する有様で、「化けの皮が剥がれる」模様。星景撮影のような用途の現場で戦うには脆すぎるようです。

ただ、これはある種の特殊用途。カメラを使っての一般的な撮影において、このような長時間露光を行うケースはまれと言っても過言ではないでしょう。

故に、超高感度領域などセンサーの限界に挑むような用途を主としない限り、概ねR5の方が良好な撮影結果が得られる可能性が高いのではないかと推測します。

 

f:id:snowfall_2015:20210123210011j:plain

R同様物理ダイヤルから解放されたのに登録内容を変更できないMODEボタン。[A+]にどれだけの需要が…

高い色再現性に画素数からくる解像度。それでいて十分な高感度性能に「ようやく」レフ機並みとなった操作性。そこに最新の瞳AFを搭載し、動物にまで対応。

R6の時点でも述べた通り、個人的に動物AFはまさにゲームチェンジャー。この2機種を使ったあとでは、従来の動物非対応カメラは面倒に感じてしまいます。そこに解像度が加わったR5はまさに鬼に金棒。私にとってはもう一つの意味でもゲームチェンジャーであり、現時点におけるベストなカメラの一つでしょう。

ただ、オススメかと言われると個人的には微妙なところです。

 

f:id:snowfall_2015:20210123211946j:plain

一等地にあってカスタマイズすらできないRATEボタン。意味がわからないよ…

素直にオススメできない理由。それはMODEボタンやRATEボタンなど痒いところに手が届かないことや、当然ピクセルシフト機能を実装しなかったこともあります(特に後者は許し難い)。

しかしそれよりも何よりも、まず高い。これが一番のオススメできない理由です。

 

確かにR5は超高性能。少なくとも私の用途においては全ての面でR6を上回り、RからR6に乗り換えたことで生じた不満の全てを取り払ってくれました。懸念点であった高感度性能も良い意味で想定外。設定ミスでISO12800で撮影してしまった画像が、普通に使えるレベルだった時は笑ってしまったほどです。

ですが、果たしてこれに実売価格でR6の1.5倍分の価値があるのでしょうか。正直、ないと思います(あくまで個人的にですよ)。

 

f:id:snowfall_2015:20210123215320j:plain

我が家の大先輩と。21年の時を経た邂逅。

個人的な話となりますが、私の初デジカメはこのDSC-S50(約200万画素CCD)でした。2000年に入手したこのカメラを使い、家族だった猫の写真や今も管理を続けているホームページ用の写真を撮影していました。

その後2004年にCAMEDIA C-5060 Wide Zoomに乗り換えた後、コンデジの限界を感じ2006年にEOS 30Dで一眼レフを導入。それから今日まで、いかに被写体を正確にデータ化するかという観点を中心に、カメラの検証を行ってきたのです。

 

f:id:snowfall_2015:20210123223747j:plain

DSC-S50で撮る後輩たち。この1枚のために何度リテイクしたことか。よくこれで撮影していたと当時の自分を褒めてやりたい。

 

そんな私にとってEOSシステムの色再現性は一つの到達点を示してくれるものであり、18年にRを導入してから色味のことで悩むことはほとんどなくなりました。そして今回はそれに加え、印刷の網点まで描写する解像度でモアレや偽色の悩みからも解消してくれた。

私個人の感覚として、この網点まで捉えるというのはフラットヘッドスキャナーの領域。そこにデジカメが到達できたという事実はまさに衝撃であり、私の中でカメラが次のステージに進みました。

故に、このR5は私にとってもう一つの意味でのゲームチェンジャー。遂にここまで来たのかと感慨深いものがあります。

 

昔話が長くなりました。

このような経緯から、個人的にR5の性能にはある種の達成感を覚えるものがあり、感情的な面で「買ってよかった、その価値はあった」プラス補正があるのは否めないわけです。

そのため、主観では素晴らしいカメラであると感じているものの、客観的に見れば支払うコストに見合っているとは考え難く、人にオススメできるようなものではない、との評価になったわけです。

 

f:id:snowfall_2015:20210123231057j:plain

RF100-500との組み合わせは軽快な取り回しと高画素機ならではの実用性の高いクロップで換算800mmも可能に。ただし価格と供給不足が…

 

システム全体で見てもRFレンズは高額な製品ばかり優先的に導入され、普及価格帯の充実は全くと言っていいほど間に合っていません。

挙句の果てに供給不足で何から何までものがなく、マウントアダプターすら手に入らないことからEFレンズを使うこともできない有様。私は運よくボディとレンズを手に入れることができましたが、2021年1月現在も未だ気軽には手にできない状況が続いています。もはや高い安い以前の問題であり、こんな惨状では絵に描いた餅同然。オススメ云々語ることすら無意味かもしれません。

 

なんだか最後は恨み節になってしまいましたが、前述の通りR5は現時点で最高性能を有するEOSであり、それは色再現性も同様。超高感度領域などを除く一般的な用途であれば、Rから乗り換えてもR6のように失うものはないでしょう。

しかしながら、まず高い。そしてそもそも手に入らないという実情。さらに近々、ピクセルシフト機能も搭載したスチル向けの超高画素機が発表されるとの噂も考慮すると、今この時期にR5に手を出すのは極めて微妙と言わざるを得ないと思います。

私は何でも自分で試した上で評価することを基本としている上、待っている時間が勿体ないとの考え方から、今回たまたま掴んだチャンスを利用しました。入手したボディもレンズも想定以上の性能を示してくれたこともあり、そのことに後悔はありません。

ですが、客観的に見れば噂の新機種(他社含む)の情報を待ってから行動するのが、冷静な判断と言えるのではないでしょうか。

「5」だけのことはある素晴らしいカメラです。しかし今は「待ち」だと思います。

 

参考までに、今回の検証で使用したプロファイルを公開しておきます。以下の記事からどうぞ。

 Custom Camera Profile

 

関連記事

 EOS R6 review - color test vs EOS R
 Custom Lens Dust Cap RF
 EOS R color test - after ACR 11.2
 EOS R resolution test vs α7III
 EOS R SNR test vs α7III
 EOS R color test vs α7III
 α7III color test vs α7II
 α7II color test vs D750 & EOS M2 & K-5IIs
 D750 color test vs K-5IIs
 Custom Camera Profile
 EOS M2 color test vs D750 & K-5IIs
 D750 color test 2 (retest)