EOS R resolution test vs α7III
レフ機からミラーレスへ - α7III比での解像度について検証する
EOS Rレビュー第3段。SNRの次は解像度について。α7IIIと比較検証します。
極力条件を揃えるため、レンズはマウントアダプター(EF-EOS R/MC-11)経由でTAMRON SP AF90mm F/2.8 Di MACRO(EF)を使用。絞りはF8.0でレンズ補正は全てoffに設定。
特に記載のない場合、撮って出しJPEGのPS(ピクチャースタイル)とCS(クリエイティブスタイル)は共にStd(Standard:スタンダード)。RAW現像にはACR(Adobe Camera Raw 11.0)とDPP(Digital Photo Professional 4.9.20)を使用。ACRのプロファイルはAdobe Color、ディテールタブのシャープ設定はAdobeデフォルト(40/1.0/25/0)です。
シャッターは両機種ともに電子シャッター(サイレント撮影)を用いました。
撮影範囲は極力揃えるようにしたものの、取り付けたクイックシューの形状が異なることもありどうしてもズレが生じています。その点については留意して下さい。
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1. RAWに迫るJPEGの解像度
まず最初にEOS R単体で現像による差異を確認。赤枠で囲った箇所を300%に拡大(ニアレストネイバー)し、その描写をスキャナー(CanoScan 8800F:2400dpi)と比較します。
最もスキャナーに近いのはACR。明らかに網点の描写が他を上回っています。
しかしJPEGとの差異は明確でありながらも劇的なものではありません。完全に塗り潰しだったEOS M2とはまるで別物で、オンチップADCセンサー搭載機のチューニングが完全に変わっていることを伺わせます。
そしてJPEGとDPPにはほとんど差異がありません。あえて言うならC(シアン)とY(イエロー)は若干ながらDPPが、G(グリーン)とR(レッド)はJPEGの方が解像できている印象。トータルでは微妙ながらもJPEGの方が上回っていると言えそうです。
ここではDPPだけ網点の描写が潰れ気味。また、網点に干渉して発生した格子状のモアレがACRとJPEGでは描写されているのにに対し、DPPでは不鮮明に。こうした差異は他の箇所でも確認できます。
ここでも網点の描写が最も不鮮明になっているのはDPP。そして描写上もう1つ気になるのが、DPPが最も文字の輪郭にリンギングが目立つことです。
どうにもDPPのシャープ処理はあまり品質が高くないようで、このようにリンギングが目立つ傾向があります。荒っぽい昔ながらのシャープネスとでも言いましょうか。特にDLOを有効にした場合は顕著で、EOS Rのボディ内DLOとはまるで別物。同じ仕上がりになるとは考えない方が無難です。
これは以前EOS Mシリーズで検証した時にも確認できたことから、EOS RではなくDPP側に原因があると考えるのが妥当でしょう。色に関しては完璧に等しい再現度を見せたものの、解像度やシャープ処理などの描写面では既に最新機種に及ばない状況になっているようです。
ただ、撮って出しJPEGが純正アプリの現像結果を上回る状況はD750(2014年発売)でも確認できました。昔に比べボディの処理能力が向上した結果、最近の機種ではこのような逆転現象が発生していると考えられます。既に単純な画質のためにRAW現像する時代ではないということなのでしょう。
2. 明らかにα7IIIを上回るEOS R
続いてα7IIIとの比較。
JPEGよりACRの方が解像しているのは両機種とも同じ。しかしどちらもEOS Rの方が網点を描写できていることがわかります。特にわかりやすいのがYで、α7IIIは網点が分離できず点ではなく線に。
対してEOS RはJPEGの時点でα7IIIのRAWよりも分離できています。
そしてもう1つ注目すべきがこのモアレ。α7IIIではJPEG/ACR共に強烈なモアレが発生しており、紫の斜線がはっきりと確認できます。ここまでくると色再現への影響が無視できない状況です。
EOS Rもモアレ自体は発生しているものの、遥かに軽微で実害が出る可能性も圧倒的に低いと考えられます。画質においてこれは大きなアドバンテージと評することができるでしょう。
等倍表示。
さすがに解像度は300%表示時のような差異は感じないものの、それでも誤差と言うには大きすぎる差異があることがわかります。
そしてモアレによる斜線ははっきりと。やはり影響は無視できません。
3. モアレの差異は風景でも
次に屋外撮影での比較。
なお、日照条件や風の影響で被写体の状況は常に変動していることは留意して下さい。
JPEGとACRで程度の差異こそあれど、明らかにα7IIIはモアレが目立ちます。特にJPEGの方はシマシマと言った感じで非常に強烈。これが同色の壁面全てで発生しており、まるでそういう模様であるかのような描写に。また、窓のブラインドらしきものにも不自然な模様が発生しています。
それに対し、EOS Rもモアレ自体は発生しているものの非常に軽微。これならほとんど問題になることはなさそうです。
しかし全ての箇所で問題がないわけではなく、こうしてより遠方の被写体では解像度が不足し盛大なモアレが発生。あえて比較するならEOS Rの方が抑えられていると評価できなくもないものの、右の300mmで撮ったものと比較すれば両機種ともに全く解像できていないことは明らかです。
また、JPEG同士で比較すると明らかにα7IIIの方が高精細感があり、EOS Rはぼんやりとした印象。植え込みの葉もベッタリとした油絵的なタッチに。
その一方でACRの描写はJPEGのように明確な差異は無く、若干α7IIIの方がキレが良い程度。解像に関してはEOS Rの方がフェンスの斜線などを描写できていることがわかります。
4. 異なるのは解像感
この傾向は他の被写体でも確認することができます。例えばこのタオル地。
*この被写体は撮影距離が近かったため、クイックシュー形状の影響を受けEOS Rの方が離れた状態(完全一致より小さく写っている=不利)になっています。
やはりJPEGだとEOS Rは緩く、α7IIIの方が引き締まって高精細感のある描写。その一方でACRはほとんど変わらず。気持ちキレが異なる程度です。
例えば樹木。
葉脈や樹皮の描写がJPEGではα7IIIの方が引き締まって見えるのに対し、ACRではほぼ変わらず。むしろ樹皮の描写はEOS Rの方が高精細で画素数相応な印象となりました。
なぜRAWに対しJPEGではこのような描写の差異が生じるのか。これは現像エンジンの差異が原因で、シャープネス強めでかっちり描写するα7IIIのBIONZに対し、EOS RのDIGICはCanonらしい軟らかな描写と言えるでしょう。
ただ、EOS Rも完全塗り絵状態だった以前の機種とはまるで別物で、相当解像度寄りのチューニング。やはり2018年の機種だけに現代的な仕上がりになっているようです。
なお、この差異はシャープネスの設定である程度の調整が可能。
今回使用したPS:StdのS,F,T(強さ,細かさ,しきい値)は4,2,4。それに対しFD(Fine detail:ディテール重視)は4,1,1。Stdもこの値に設定することで強さ自体は変わらないものの、細かさとしきい値が下がることで繊細な描写を得ることが可能です。
*参考:新ピクチャースタイル「ディテール重視」で線の細い高精細描写を実現 - デジカメ Watch
参考として左Std(4,2,4)、右FD(4,1,1)。どちらも撮って出しJPEG。
若干話が逸れますが、上記参考記事でも説明されているようにFDはハイライト側のトーンがStrよりも抑えられ、Ntrl(Neutral:ニュートラル)やFF(Faithful:忠実設定)と同等。そのためしっとりと色が乗った軟らかい描写を得ることが可能です。この画像でも葉脈や樹皮のハイライトまでの繋がりが滑らかで、細部の質感が高いことがわかります。
対してStrの方は良く言えばパキッとしていると評せなくもないものの、FDと見比べてしまうと階調も荒くシャープネスも大味。がさつで安っぽい印象は拭えません。
FDは2015年発売のEOS 5Dsから搭載された新しいPSということもあり、高画素化が進んでいる現行機種との相性は良好。そのまま使うのももちろん、個人的にはカスタマイズ用のベースプロファイルとしても適していると感じています。
ただ、以前の検証でも述べた通りStdとは色味が異なる点には注意が必要。このStdとFDの画像を見てもわかるように特にGの差異が大きいため、被写体に樹木や草木が含まれる場合は十分考慮する必要があります。
話を再びα7IIIとの比較に戻します。上記画像は上段中段はそれぞれの撮って出しJPEG、そして下段はEOS RのJPEGにシャープ処理(Photoshopスマートシャープ:130%/0.7/4)したもの。
こうすると葉脈や樹皮の描写も大差ありません。そしてこれは他の画像でも同様。つまりα7IIIのJPEGが引き締まって見えるのはシャープ処理の差異によるものであり、解像度ではなく解像「感」が高いに過ぎないと判断できます。
5. 結論
塗り絵はもはや過去のもの。RAWはもちろん撮って出しJPEGでも画素数相応の解像度を有し、3030万画素のスペックに恥じない描写。Canonらしい油絵調の軟らかいタッチは維持しつつも、自由度の高いシャープ設定である程度の調整が可能。α7IIIとの差異は解像「感」に過ぎず、解像度は明確にEOS Rが勝る。
検証前、2420万画素(6000x4000px)と3030万画素(6720x4480px)ではそれほど変わらないのではと思っていました。そのため解像度はもちろんのこと、モアレでここまでの差異が生じたことには驚きです。
以前からCanonはLPF(ローパスフィルター)レスに対して慎重な姿勢を取っており、5060万画素のEOS 5Dsシリーズでも必要性を説いています。
*参考:ローパスフィルターが原則必要というキヤノンのスタンスに変更はない - デジカメ Watch
そしてEOS RはLPFを1枚にしたEOS Mシリーズとは異なり、従来のレフ機同様2枚構成の4点分離タイプであることが確認されているとのこと。
*参考
:ローパスフィルターは2点分離タイプ。画素数増とあわせて解像感が高める - デジカメ Watch
:Canon EOS R review: Digital Photography Review
このような経緯もあってか、「CanonのセンサーはLPFが強く解像しない」といった意見もあるようです。確かに両機種をRAWで比較した場合、同一設定のACRで現像したにも関わらずα7IIIの方がキレが良いと感じることもあります。それが「Canonは解像しない」の論拠となっているのかもしれません。
しかし、レンズを揃えて行った今回の検証結果は前述の通り。その「LPFの差異」は僅かなもので、「画素数の差異」を埋めるようなものでは全くありませんでした。
RAW時点でのキレの差異など単なる解像「感」の差異でしかなく、実際に解像しているのはより高画素なEOS Rであることは明白。それどころか撮って出しJPEGでもα7IIIが勝っているのは解像「感」のみ。実際に高解像なのはEOS Rです。
より高画素な方がより高解像度。当たり前と言えば当たり前の結果。
Canon機(EOS)はメーカーがLPFの扱いに慎重だったことや、塗り絵のようだった以前のJPEGが原因となってか、解像度が低いというイメージが今も付きまとっているように思えます。
確かに最新のEOS RでもJPEGのタッチ自体は以前の流れを汲むものであり、α7IIIのようなカリカリしたものではありません。解像度が求められる風景などをデフォルト設定のまま撮影し等倍比較でも行えば、一見α7IIIの方が適しているようにも見えるでしょう。
ですがそれは解像「感」に過ぎず、本当の意味で解像度が高いわけではありません。そして解像感は後処理で強化することはできても、解像度自体はRAWの状態以上にすることはできません。
高感度SNRと暗部描写はα7IIIに一歩及ばないものの、色再現性と調整の自由度は極めて高く、ハイライト描写も優れるEOS R。それに加えて「解像度」も画素数相応に優れモアレも出づらいことを考慮すると、画質という面では中々の好バランス機と評価できそうです。
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