snowfallのメモ帳

趣味に関することなどを適当に綴る備忘録兼用のメモ帳

α7III color test vs α7II

α7IIからα7IIIへ - 第3世代の色再現性について検証する

  1. 改善したスタンダードと変わらないニュートラル
  2. IDC時代から大きく改善したIE
  3. ACR SONY用プロファイルの再現性も改善
  4. Capture Oneでも傾向の異なる2機種
  5. ColorChecker PassportではRが過補正に
  6. DNG Profile EditorはAdobe Color非対応
  7. Adobe ColorベースのプロファイルでDNGPE以上の結果に
  8. 結論

2018年にようやく発売となったα7III。果たして2014年発売の前機種α7IIからどのように変化したのか。まずは色再現性について検証してみます。

 

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検証に用いるのはいつもの被写体。セッティングに関しても以前とほぼ同等です。

光源はLED電球(東芝キレイ色:LDA9N-D-G)、WBはマクベスのWBカードでのプリセット。露出は背景の銀一グレーカード(旧)で取っています。

 *参考:照明器具とその演色性(スペクトグラム) / 佐々木ヴァイオリン製作工房

レンズはα7IIとα7IIIはFE 50mm F2.8 Macro、絞りはどちらもF8.0。ボディのレンズ補正は歪曲補正のみoffとしています。

色空間はAdobeRGB。ただしこのページに貼り付けてあるものはブラウザでの表示を考慮しsRGBに変換してあります。Flickr等外部にリンクしてあるものにはAdobeRGBのファイルもあるので表示環境にはご注意下さい。

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1. 改善したスタンダードと変わらないニュートラ

ではまず撮って出しJPEGの各CS(クリエイティブスタイル)とACR(Adobe Camera Raw 10.3)の値から見ていきます。

なお、ACRは2018年4月リリースの10.3からデフォルトのプロファイルがAdobe Standard(ASD)からAdobe Color(Acol)に変更されました。今回は過渡期ということもあり両方のデータを取得しましたが、今後はAcolに一本化していく予定です。

 

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全体の傾向としてはRがプラスに回ることはα7IIと変わらず。しかし個別に見るとスタンダードや夜景ではGの差異の方が大きくなる代わりにRは小さくなっていたりと、変化が見られます。また、マイナス傾向のあったBがプラスに回っているのも特徴的です。

ACRはASD/Acol共にBの差異が大きいのが特徴的。差異そのものはAcolの方が小さく、より理想値に近くなりました。

 

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同一環境で取得したα7IIの値とα7IIIとの差異。

やはり前回同様、α7IIは全CS通じてRのプラス転びが特徴的。α7IIIとは傾向が異なることがはっきりとしています。

そしてα7IIIとの差異ではBが最大のCSが多いものの、個別に見るとGやMだったりと一貫性はありません。最も類似しているニュートラルの最大差異はBの4度。他は2度以内に収まっていることを考慮すると、異なる機種としてはかなり近い状態。これがSONYにとっての「ニュートラル」なのだろうと判断できそうです。

しかし気になるのはRの数値。スタンダードではα7IIIに大きく改善が見られる一方、ニュートラルではむしろα7IIの方が優秀。その他の数値も誤差レベルとは言えα7IIの方が理想値に近くなっています。

 

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CSチャート一覧。リンク先ファイルの色空間はAdobeRGBなので注意。

こうして見るとかなりの差異が存在し、数値上は最も類似しているニュートラルですら明確な差異があることがわかります。総じて見るとα7IIIの方が色のメリハリが強く、シャッキリしたと言ったところでしょうか。

ただ、やはりニュートラルでは数値通りの印象で、率直に言ってしまえばα7IIの方が実物に近いと感じます。

 

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特にRは輝度差の影響でα7IIの方が赤く見えるとは言え、露出補正を下げても色相自体が変わるわけではありません。ニュートラルではα7IIの方が実物に近い赤となっています。

一方でスタンダードのRは数値的にも視覚的にもα7IIのニュートラル以上。なぜスタンダードでは大きく改善しておきながらニュートラルではむしろ悪化してしまったのか。釈然としないものがあります。

 

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全体像。やはりスタンダードはより色鮮やかになり好印象。いわゆる「色乗りが良い」状態となり、以前のSONY機で見られた退色感が随分と改善されました。あっさりめの傾向はあるものの、スタンダードカラーとしてより使いやすくなったと言えるでしょう。懸念点であったRがプラスに転ぶ傾向も改善され、赤い被写体が赤く写るようになったのも非常に良いポイントです。

逆にニュートラルは差異が小さく、このサイズではほとんど変わりません。ミッドトーンの階調などに違いは見られるものの、スタンダードの変化と比べれば小さなものです。

スタンダードの変貌からもわかるように、SONYは機種間の一貫性を重視してはいません。まるで昔のデジカメのように、機種毎に色が異なる状況を容認しています。にも関わらず、何故ニュートラルは無駄に旧世代に合わせようとしているのか。個人的には疑問を感じます。

 

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次にACRでのチャート一覧。リンク先ファイルの色空間はAdobeRGBなので注意。

まずASDとAcolの差異について。

これはα7II/III共にAcolの方がより発色が良く色鮮やかになり、コントラストも高まっています。しっかりとした色乗り感は好ましい変化。Adobeの主張通り、より現代的になったと評することができるでしょう。個人的にRの改善も評価したいポイントです。

 

blogs.adobe.com

そして同プロファイルでの2機種間の差異は数値通りなようで、色によってどちらが優れる場合もあるようです。

ただ、総じて見ると前機種であるα7IIの方が差異が小さい場合が多く、実物と見比べても若干ながらα7IIの方が近いようにも感じます。

また、α7IIの方が彩度が高い場合が多く、より色乗りが良く「こってり」した印象。逆にα7IIIは「あっさり」しています。大雑把に見ると、色乗りに関してはα7IIのASD=α7IIIのAcolと言ったところでしょうか。色が浅く出るというのはセンサーのDレンジも関係するため、よりDレンジが広くなった結果かもしれません。

とは言え、センサーも異なる他機種間としては十分近い状態を再現できていると評価できるでしょう。同一プロファイル同士であれば一貫性を保つことはできており、機種変更時の調整もそこまで苦労しないで済みそうです。

 

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全体像。

やはりこうして引きで見るとα7IIは色が強く乗り、α7IIIはあっさりと薄めであることがはっきりします。特にY絡みの発色に差異が目立つ印象。統一感を出したい場合はこの辺りをどう調整するかがポイントになりそうです。

 

2. IDC時代から大きく改善したIE

次にIE(Imaging Edge 1.1.00)と撮って出しJPEGの差異を見ていきましょう。このアプリは名前こそ変わっているものの、中身はIDC(Image Data Converter)の拡張版らしく、アクセスしたディレクトリにはIDCLabelInfo.xmlが作成されます。

なお、風景(Landscape)と夕景(Sunset)に差異が無いのはWBを固定した状態で撮影したためです。夕景は「風景のWBを調整して色味を変える」設定であり、それを有効にするためにはWBをAWBに設定する必要があります(SONY確認済み)。

今回は検証用データ取得後にこの「仕様」が判明したことに加え、夕刻とは光の条件がかけ離れた環境でAWBのデータを取得する意味があるとは考え難いため、データの再取得は行っておりません。

ただ前述の通り、カメラの撮って出しではWB固定でもIEのように完全一致はせず、僅かながらも差異が生じます。

 

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IEの値とα7III撮って出しJPEGの差異。

最大で7度の差異。ニュートラルでも4度も差異があったりと数値的にはIDC時代と変わらないか、むしろ悪化しているような状況。

 

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スタンダードとニュートラルでチャート比較。左が撮って出しJPEG、右がIE

こうして見ても差異の大きな色ははっきりと違いがわかります。しかし総じて見ればそれなりに揃っている印象で、悪くはありません。

 

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特にグレーバランスが改善されているお陰か全体像で見れば中々の仕上がりで、ACRの方がマシだったIDC時代からすれば大きな前進。ようやく純正アプリとしての体裁を保てるレベルに達したと評価できそうです。

とは言え、CanonNikonは差異を3度以内に収めていたことを考慮すると、まだまだ課題は山積みです。

 

3. ACR SONY用プロファイルの再現性も改善

続いてACRのSONY用カメラプロファイル(カメラマッチング)を確認してみます。なお、ACRプリセットに夕景、夜景、紅葉は存在しません。

 

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ベストで5度の差異があるのは前回のα7IIと同様。しかし最大では7度と前回の13度から大きく改善。IEと遜色無いレベルに達していると言えそうです。

 

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やはりIE同様ターゲットによって差異はあるものの、総じて見ればそれなりと言った印象。

 

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全体像で見ても悪くない印象。純正ではないことを考慮すると十分な再現度と評価できるのではないでしょうか。

 

IE/JPEG/ACRを並べたもの。参考用にどうぞ。

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4. Capture Oneでも傾向の異なる2機種

次に前回のα7IIでは非常に優秀な結果となったC1(Capture One)を確認してみます。なお、C1のα7III用プロファイルは11.1だとGenericのみです。

 

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相変わらずα7IIのRは素晴らしい値。しっかりと朱ではなく赤を再現できています。

それに対しα7IIIは359度と今ひとつ。α7IIと比較してしまうと明らかに劣る印象。ただその一方でBは改善していたりと、ACR同様それぞれ異なる傾向を見せました。

しかし最大では10度の差異があったりと、総じて見るとα7IIの方がより理想値に近い値になっています。これまたACRと同じ傾向です。

 

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チャートで見てもこの通り。確かに類似性は感じるものの、比較するとそれなりの差異があることがわかります。個人的には重視しているRが明らかにα7IIの方が良いのが微妙な印象ではあるものの、その一方でB絡みは数値通りα7IIIの方が優秀な結果となりました。

 

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全体で見ればACR程は差異を感じない、と言ったところでしょうか。

α7IIではデフォルトで素晴らしい再現性を誇ったC1ですが、必ずしもα7IIIではそれをそのまま引き継いだ、とは言い難いようです。

また、α7IIIでは公式ページでCapture One Express(for Sony)の掲載が外されているのは若干気になる点。突然打ち切られることはないとしても、今後も順オプションとして無償提供され続けるのかは疑問が残る状況となっています。

 

5. ColorChecker PassportではRが過補正に

次はColorChecker Passport(CCP)を用いてACR用のプロファイルを作成してみます。

 *参考:ColorChecker Passport - Camera & Image Calibration: X-Rite Photo & Video

 

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α7IIは前回同様かなり理想的な結果となりました。やはりCCPとの相性は良いのかもしれません。

それに対しα7IIIはRが回りすぎてしまい、明らかに過補正な状態に。前回のEOS M2ほどでは無いとは言え、α7IIに比べるとちょっとこれは…と感じてしまう値になりました。

 

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チャートでチェック。

CCPの結果には統一感があり、機種間の差異を上手く補正していることがわかります。

しかしα7IIIのRはやはり回りすぎている感が強く、これだとASDやAcolよりはマシ…いやいやどうだろうと悩ましい結果に。好印象のα7IIとは異なり、積極的に使いたいかとなると微妙なところです。

 

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全体像で見てもやはりα7IIは良好。そしてα7IIIとの統一感も良好です。手早く機種間の差異を抑えたい場合、またはCCPの結果が好みに合う場合は積極的に活用するのも良いでしょう。

ただ前述の通り、α7III単体で見た場合は必ずしも理想的な結果とは言えず、CCPとの相性が良いのかは疑問が残る結果となりました。

 

6. DNG Profile EditorはAdobe Color非対応

次にDNG Profile Editor(DNGPE)での結果を見ていきます。

 *参考:Photoshop Playbook: How to Use the DNG Profile Editor to Adjust Color and Light - YouTube

なおDNGPEはAcolに対応しておらず、ベースプロファイルとして選択することができません。2012年の1.0.4を最後に更新が止まっており、残念ですがβ版で打ち切られたと考えるのが妥当な状況です。

そのためDNGPEの使用は今回で最後とし、今後はACRの調整機能を用いてAcolベースのプロファイルを作成していく予定です。

 

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例によって自動処理の結果は望ましいものではなかったため、手動調整の結果から。

α7IIは前回同様BとCの引っ張り合いで完全な値は出せなかったものの、それ以外は理想値通りの値に。慣れもあるかもしれませんが以外と簡単に弄れます。

それに対しα7IIIはBとCがα7IIより大きく回っているのがそのまま残ったと言うか、手動なのにCCP以下と微妙な結果。今回は軽めの調整で切り上げた影響もあるものの、基本的には素のASDの値が大きく影響しています。

と言うか、ここから追い込んでも正直…って感じなんですよねこのパターンは。元が214となるとK-5IIsの218以下で、補正しようにも無理が出てくると言うか、こうなると数値は追わずに彩度上げて輝度落としてそれっぽくしちゃった方が無難に仕上がることが多いのです。

 

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チャートはこのような結果に。

こうして見ると、差異が大きく残ったα7IIIのBもそれなりにそれっぽく仕上がっているのではないでしょうか。

ただ、ACRのプロファイルで個人的に気になるのがGの上にあるpurplish blue(pB)です。ここはpBの名前通り、実際はα7IIのように紫感の強い色。しかし同じような補正をしてもα7IIIではほとんど「青」と言った印象で、実際の色とはかなり異なっています。Bの差異が9度存在することが原因かもしれません。追い込みたいのであればここも個別に調整した方がよさそうです。

 

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全体像。

統一感はそれなり。ただし前述のpBについてはこのサイズでもはっきり差異が見て取れます。

またα7IIのYに関しては色相以外はあまり追い込まなかったこともあり、元のASDにあった強すぎる感じがほぼそのまま残っていますね。これに関しては頑張ればもう少し改善すること自体は可能です。

ただ前述の通りAdobeのデフォルトはAcolに切り替わり、DNGPE/ASDは旧世代のものとなりました。あえて追求する価値があるかは疑問です。今回も最後に一応やっておいた程度のサンプルだとお考え下さい。

 

7. Adobe ColorベースのプロファイルでDNGPE以上の結果に

最後にAcolベースのカスタムプロファイルを作成します。

 

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前項で述べた通りDNGPEはAcolに対応しておらず、カスタムプロファイル用のベースとして用いることができません。

 

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そのためACRのトーンカーブやHSL調整を用います。

スライダーによる調整は色相環ほど直感的ではないものの、8軸ある上にターゲット調整ツールという便利な機能もあり、慣れれば手早く作業を進めることができるでしょう。

ちなみにターゲット調整ツールはショートカットでHSL切り替えが可能です。割り当てキーもHSLに対応してCtrl+Shft+Alt+H/S/Lととても覚えやすく、これを使うと作業が捗りますよ。

 

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そしてこれが実際にACRで調整した数値ですが、α7IIは完璧。AcolはASDから改善された分だけベースとしても優れていたようで、ASDベースのDNGPEよりも容易に理想値に持っていけた印象です。

そしてα7IIIもα7II同様優秀な値に。このタイプのBとCはシーソーゲームになることを考えるとかなりいい結果と言えます。

 

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チャートはこのように。

どのターゲットも優秀。数値通り実物にもかなり近い状態です。今まで気になったpBも適度に紫感を出せています。

そして元から色が強めのα7IIは控えめ、逆にあっさり目のα7IIIは強めに補正したことで、色乗りに関する機種間の差異もかなり縮まりました。

ただ個性を完全に殺すことが目的ではないため、ある程度の癖は意図的に残しています。

 

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全体で見ても機種毎の個性は残しつつも統一感があり、よりニュートラルかつ適度な色乗りに仕上がったように思います。

 

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AcolデフォルトだとYが強すぎるα7IIの癖もこの通り。悪くない程度に補正できました。

 

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ただ、若干心残りなのがこのα7IIIのG絡み。この部分は実際だとα7IIのように緑感が強いのですが、α7IIIではあまりそれが再現できませんでした。この辺り、可能であればもう少し追い込んでみたいところです。

 

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α7III ACRプロファイルチャート一覧。

AdobeRGBのファイルへのリンクはこちら

同じAdobe系だけに類似性は見せつつも、pBのように明らかな相違点もあったりするのが興味深い。

そしてACR全体を通して見ると、やはり新プロファイルAcolがデフォルトとしても、ベースとしても優れている印象。これなら安心してASDから切り替えて行けそうですね。

 

8. 結論

撮って出しは改善するも、RAWまで含めたトータルでは一長一短。低感度で使う限り、進化の程度は限定的。

 

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過去の測定値一覧

 

スタンダードは大きく改善。特にRはより正確に赤を表現できるようになり、色乗りの改善と相まって進化を感じさせてくれる。

しかし、ほぼ変わらないニュートラルに相変わらず使い辛いその他CS。Rが回りすぎてしまうことは相変わらず、いやむしろα7II以上のCSもあり、まるでスタンダードとその他CSで別々に調整したかのよう。このRの回りっぷりはNikonのD750を超えており、使いやすいかと言われれば大いに疑問が残るレベル。

 

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そして色相どころか調整可能なのはコントラスト、彩度、シャープのたった3項目を±3だけのなのはα7IIと変わらず。と言うか2013年発売の初代α7から変わっていない。何一つ進化していない。

微調整ができない上、スタンダードとその他CS間に一貫性が無いことから調整代わりに使うこともできない。画質調整可能な幅が極めて狭く、ユーザーが思い通りにできる道具からはかけ離れた仕様となっている。

 

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調整可能なのはシャープ1項目を±2だけだったDSC-S50。2000年発売のこの機種よりは進化しているが…

 

結局RAW頼みだがC1との相性はα7IIほどでもなく、ACRでは新プロファイルのお陰で悪くない結果を得られはするが、それでも補正は必須。最新センサーの性能と内部処理能力の向上は感じるものの、4年の歳月を考慮すると劇的とも言い難い。

とまぁ、こんなところじゃないでしょうか。率直に言えば肩透かし感があったというか、むしろRAWではα7IIの優秀さが再確認され甲乙付け難いような結果。思ったほどでは…となってしまうのも仕方ありません。

 

なぜ世間の高い評価と大きく異なる結論となったのか。それはこの検証があくまで「色再現性に限ったもの」であるからです。カメラとして全体を通じての評価ではありません。そのためこの結論がα7IIIに対する私の総評というわけではありませんのでお間違いなく。SNRやDR、AFや操作系その他の改善については私も高く評価しており、完璧ではないとは言え前機種から格段の進歩を遂げたと感じています。

ただ、やはり色再現性に限って言えば若干の期待外れ感があったのもまた事実。この点について最重視している身としては残念とまではいかなくとも、「こんなもの?」と思わざるを得ません。せめて以前より微調整できるようになれば良かったのですが、2017年4月時点でSONYの見解は「そういうことはPC(RAW)で編集して下さい」だそうです。

ちなみにCanonは今回作成したプロファイルと同等以上のものを作成できるPSE(Picture Style Editor)を2007年から提供しており、作成したプロファイルはカメラボディにも登録が可能。つまり、撮って出しJPEGの時点でPCでのRAW現像レベルのカスタマイズが11年前から可能です。このツールは現在も更新が続いており、最新機種にも対応しています。

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PSEはソフト面も強いCanonだけが持つ強みであり、SONY以外の競合他社も11年経過した今でも同等のツールを提供できていません。恐らくこの状況は今後も変わる可能性は低いでしょう。

しかし代替手段としてボディ側の調整力を改善したり、RAW現像など機能向上をすることでユーザビリティを向上させ、PSEと同等のツールが用意できずとも戦える製品を生み出して行きました。一方、SONYは5年前でも時代遅れ感のあった状態から一歩も前に進んでいません。

 

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α7IIIは確かに優れた機種であり、現時点ではベストバイと持て囃されるのも道理。ただ色再現性の面においてはこの通り。必ずしもベストバイとは言えません。

カメラに何を求めるか。α7IIIに限ったことではありませんが、それを理解した上で選択するのが良いでしょう。

 

参考までに、今回の検証で使用したプロファイルを公開しておきます。以下の記事からどうぞ。

 Custom Camera Profile

 

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